
2025.04.10
樹脂と金属では、公差に大きな差があります。
金属は、一般的に熱膨張率が低く、加工精度も高いため、厳しい公差を設定できます。
例えば、切削加工では±0.01mm程度の精度も可能です。JIS規格で細かく公差等級が定められており、設計者は用途に合わせて選択できます。
一方、樹脂は、金属に比べて熱膨張率が大きく、吸水性による寸法変化も起こりやすいため、公差は大きめに設定する必要があります。特に射出成形では、成形収縮や反りといった現象も考慮しなければなりません。一般的に、樹脂の公差は金属の10倍程度になることもあります。
樹脂を切削加工する場合の公差
ただし、樹脂の種類や加工方法によっても公差は異なります。
例えば、エンジニアリングプラスチックと呼ばれる高機能樹脂は、比較的精度が出しやすい傾向があります。また、切削加工であれば、射出成形よりも厳しい公差を実現できる場合があります。
以下に代表的なエンジニアリングプラスチックの種類と、それぞれの特性を踏まえた上で、切削加工で実現可能な厳しい公差の目安をまとめます。
エンジニアプラスチックの公差一覧(目安)
【汎用エンジニアリングプラスチック】
①ポリアミド (PA, ナイロン): 比較的寸法安定性が高く、±0.05mm程度の公差が可能な場合があります。吸水性による寸法変化には注意が必要です。
②ポリアセタール (POM, ジュラコン): 機械加工性が良好で、±0.02mm程度の高精度な加工が期待できます。
③ポリカーボネート (PC): 透明性・耐衝撃性に優れますが、切削時のバリやクラックに注意が必要で、公差は±0.1mm程度が目安です。
④ポリブチレンテレフタレート (PBT): 電気特性に優れ、±0.05mm程度の公差が可能です。
【スーパーエンジニアリングプラスチック】
①ポリイミド (PI): 高耐熱性で、±0.05mm程度の公差が可能です。
②ポリエーテルイミド (PEI, ウルテム): 高強度・高耐熱性で、±0.05mm程度の公差が期待できます。
③ポリアミドイミド (PAI, トルロン): 非常に高い強度・耐熱性を持ち、±0.03mm程度の高精度加工が可能です。
④ポリエーテルエーテルケトン (PEEK): 優れた耐薬品性・耐摩耗性を持ち、±0.02mm程度の精密加工が可能です。
⑤フッ素樹脂 (PTFE, テフロン): 優れた耐薬品性・低摩擦性を持つ一方、軟らかく変形しやすいため、公差は±0.1mm程度が目安です。充填材入りグレードでは、より高精度な加工が可能な場合があります。
<<注意点>>
上記はあくまで目安であり、部品の形状、サイズ、加工方法、使用する工作機械の精度などによって実現可能な公差は変動します。
より厳しい公差を実現するためには、精密な加工技術とノウハウが不可欠です。
射出成形の場合、一般的に切削加工よりも公差は大きくなります。精密射出成形においても、±0.05mm~±0.1mm程度の公差が限界となることが多いです。